Tabaimo
束芋は、手描きのアニメーション映像をインスタレーションに仕立てた特徴的なスタイルで知られます。浮世絵を思わせる色使いと飄々としたリズムで描く日常風景を通して、現代社会の暗部や個人の内面世界をシュールかつシニカルに照らし出します。
1999年の鮮烈なデビュー作《にっぽんの台所》では、狭い台所で日々の雑事に追われる主婦の日常が絵巻物のような映像で展開します。空から高校生が降ると伝える天気予報や、電子レンジの中で演説する政治家といった不条理な光景は、若年層の自殺問題や政治不信など、解決策もないまま消費されていくニュースを風刺するかのようです。横断歩道、銭湯、通勤電車など日本的な風景を舞台とするその他の作品も予定調和の中の歪みや、日々の表層下に潜む不穏な現実に鋭く切り込みます。こうした制作スタイルを評価され、2001年には第1回横浜トリエンナーレに最年少作家として選ばれました。
その後、2003年のロンドン滞在を経て、束芋は創作の転換期を迎えます。それまで日本社会という外界の諸相を批評的に描き出してきた彼女は、海外で得た客観的視点と内省の機会を通して、より一層「内と外」の関係性を深く問うようになります。例えば、《公衆便女》(2006)では、3面の大型スクリーンに女性トイレでの人々の振る舞いを映し出します。公衆の場でありながら、皆が互いに無関心を装って自分に向き合う空間。それは他人同士が閉鎖的な空間で情報を密に共有するという奇妙な構図を持つインターネット社会を彷彿とさせます。
さらに《dolefullhouse》(2007)で、束芋はアトピー性皮膚炎を患ってきた自身の手に接写的な眼差しを向けています。ドールハウスの中に瀟洒な家具を配置していく手はまるで内側で何かが蠢く一つの生命体のようであり、理想と現実の乖離に苛立つかのように、時折、指や手首を執拗に掻きむしります。
その後、2011年のヴェネツィアビエンナーレで日本代表として《てれこスープ》を発表。「井の中の蛙」のことわざに着想を得た本作は、鏡を用いた空間の中でイメージを拡張させる展示方法で、より身体的な体験を鑑賞者に促しました。
また、イスラエルのバットシェヴァ舞踊団のオハッド・ナハリンとの舞台制作(2006)を皮切りに、束芋はさまざまなコラボレーションに着手します。新聞小説の挿絵制作やダンサーとの協働を経て、2024年には海外のアニメーション作家との共作で、鑑賞者が光と音を頼りに空間を巡る回遊型のインスタレーション《触れてなどいない》を発表。こうした他ジャンルの創作者との活動を通して、さらなる表現の広がりを見せています。
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「第1回横浜トリエンナーレ」(2001)や「第15回シドニー・ビエンナーレ」(2006)、また「第54回ヴェネチア・ビエンナーレ」(2011)では日本館で個展を開催するなど、数々の国際展に参加。これまでの主な個展に原美術館(東京、2006)、カルティエ現代美術財団(パリ、2006)、横浜美術館(神奈川、2009)、国立国際美術館(大阪、2010)、シドニー現代美術館(2014)サンノゼ美術館(2016)、シアトル美術館(2016)、Kunstforeningen GL Strand(コペンハーゲン、2023)など。作品は国内外の主要美術館に収蔵されている。
BIOGRAPHY
1975兵庫県生まれ
1999京都造形芸術大学 芸術学部 情報デザインコース卒業
現在長野県在住
個展
2024「そのあと」ギャラリー小柳(東京)
2023「Nest」Kunstforeningen GL Strand、コペンハーゲン(デンマーク)
2020「Ghost Running Vol.2」Gallery KIDO Press(東京)
2019「透明な歪み」ポーラミュージアムアネックス(東京)
「Ghost Running」Gallery KIDO Press(東京)
2018「flow-wer arrangement」ギャラリー小柳(東京)
「束芋:ズンテントンチンシャン」Gallery KIDO Press(東京)
「Tabaimo: Clue to Utsushi」James Cohan Gallery、ニューヨーク
2017「Hammer Projects: Tabaimo」ハマー美術館、ロサンジェルス
2016「Tabaimo: Utsutsushi Utsushi」シアトル・アジア美術館
「Tabaimo: Her Room」サンノゼ現代美術館(アメリカ)
2015「息花」ギャラリー小柳(東京)
「Tabaimo: aitaisei-josei」アルル・ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ財団美術館、アルル(フランス)
2014「Tabaimo: MEKURUMEKU」オーストラリア現代美術館、シドニー
2011「Tabaimo: DANDAN」James Cohan Gallery、ニューヨーク
「束芋:てれこスープ」第54回 ヴェネチア・ビエンナーレ 日本館、ヴェニス
2010「ててて」ギャラリー小柳(東京)
「Tabaimo: Boundary Layer」パラソル・ユニット、ロンドン
「Tabaimo: emerge as」シンガポール・タイラー・プリント・インスティテュート(シンガポール)
2009「断面の世代」横浜美術館(神奈川)/国立国際美術館(大阪、2010)
「TABAIMO」ストックホルム現代美術館(スウェーデン)
2008「ハウス」ギャラリー小柳(東京)
「TABAIMO」James Cohan Gallery、ニューヨーク
2006「TABAIMO」カルティエ現代美術財団、パリ
「ヨロヨロン 束芋」原美術館(東京)
「台所にて」高橋コレクション神楽坂(東京)
2005「指弁」ギャラリー小柳(東京)
「TABAIMO」James Cohan Gallery、ニューヨーク
2003「お化け屋敷」原美術館(東京)
「にっぽんのちっちゃい台所」ギャラリー小柳(東京)
「New Print Work」HIROMI YOSHII + ギャラリー小柳 ヴューイングルーム(東京)
「束芋:夢違え」原美術館ARC(群馬)
「束芋:おどろおどろ」東京オペラシティアートギャラリー(東京)
「束芋のケタケタ」康ギャラリー(東京)
2002「束芋『にっぽんの御内』展」IMA:インターネット美術館
2001「Tabaimo – The Japanese Bathhouse」チャプター、カーディフ(イギリス)
2000「キリン コンテンポラリー・アワード1999最優秀作品賞受賞作家 束芋展」キリンプラザ大阪
「にっぽんの横断歩道 束芋展」ギャラリー16(京都)
1999「にっぽんの台所 束芋展」立体ギャラリー射手座(京都)


























